西瓜
西瓜が好きだ。
西瓜を食べることが夏の一番の楽しみといってもいい。
カット西瓜を良く買うが、たまには一玉丸ごと買う。
近所の八百屋が西瓜を安く売っていると聞きつけ早速買いに行く。
店頭にはダンボールに西瓜があふれんばかりに詰め込まれていた。
西瓜を選ぶときにポイントは中身がしっかりと詰まっているかの確認である。
すなわち叩いて音を聞くのだ。
ビィン、ビィン。
叩くたびに少し間抜けな音を響かせる西瓜。
ボォン、ボォン。
こっちは隙間がありそうだな。
ピタン、ピタン。
ビタン、ビタン。
ポコン、ポコン。
気がつくと周りは西瓜を求める人が大勢集まっていた。
皆、一心不乱に西瓜を叩く。
ピタン、ピタン。
ビタン、ビタン。
ポコン、ポコン。
おばあさんも、おじいさんも、子供も。
皆、一心不乱に西瓜を叩く。
西瓜には叩きたくなる魔力が詰まっているのだろう。
一際甲高い音を出す西瓜を手に取るとレジに向かう。
一玉980円、安い。
ビニール紐でできた籠に西瓜を入れてもらい帰路に着く。
重い西瓜を持ちながら歩く。
サンダルに砂利が入ってきて歩くたびに足を刺激する。
空は高く、入道雲。
あぁ、夏だ。今年も夏が来たのだ。
西瓜は少し腐っていた。